堀哲郎 展 2007.2.28〜3.10

eGG

堀哲郎1

「木版画とEGGSについて」

このシリーズ作品の制作開始は早く、木版画を本格的に学びだして間もない学生の頃からで、その後断続的に制作を続けているものです。

(中略)

浮世絵は木版画を学ぶ前から好きでしたが、さらに様々な表現方法を学びながら、他の技法にはない不思議さをその日本の伝統木版画に感じてしまいました。

例えば浮世絵の美人画の一枚。丸みを帯びた顔のその白い肌と、何もない肌を隔てる細く艶やかな一本の線。細かくそして短い線で描かれた、ちょっと力を入れて握ったらバラバラに折れてしまいそうな指。まるで偏執的ともいえる細密さで表現された、生え際の細い無数の髪の毛、そしてカーブを描く一本のほつれ髪。

一般に絵というのは、細い線を描くのに、細い筆や鉛筆で描けばいいわけです。ところが木版画は版にする必要から、その細い線の部分はいっさい手をつけずに残し、それ以外の部分を彫りとって線にしなければなりません。何と矛盾した不合理ともいえる技法なのでしょう。

浮世絵では主版法といって、この墨線の版を作ることが彫りの技術の中心です。それを刷ったものがベースとなって色の版が彫られます。その主版を彫るのが親方の彫師の仕事です。このあたりが西洋にも古くからあった木版画とはずいぶん違った展開を見せるところです。大学のゼミで初めてその職人さんの仕事を見て、その超人的技術と丁寧さに驚きながら、木版画の持つ不合理性のようなものに惹かれていきました。

その頃から、木版画での細い線や小さな点を中心にした作品を作り始めます。この<TAMAGO>は、原画そのものも手で描いているものではありません。卵一個分の輪郭線をコピーした紙をハサミで切断し、その線の片々を針先を使って、紙の上の矩形の中であちこち動かしては、さらに細かに切り刻んだりしながら、ある時点でセロファンテープで止めて出来上がり。

(中略)

そうやって出来た原画の中から版画にする作品を選び、コピーした紙を版下に貼り付け彫っていきます。なぜこんな方法をとるかという理由ですが、簡単に言うと、細い線も小さな点も物として考えているからといえます。小さな一つの点も重さを持った物です。そう思って絵を描きたいと考えています。それもまた、木版画という方法で作品を作ってきた中で、形づくられたものかもしれません。

最近は、ハサミとセロファンテープとコピー機の代わりに、パソコンを使用して作ったデジタル作品になっています。前よりも環境に左右されずに、よりデリケートな作業が出来るようになりました。しかし、環境に左右されないということは、物であることから離れてしまっていることですから、喜んでばかりもいられません。その新たな問題もまたこのEGGSのひとつのテーマと思っています。

堀 哲郎
(T2rou's Web Gallery に掲載したものから抜粋しました)

堀哲郎写真1 堀哲郎写真2 堀哲郎写真3 堀哲郎写真4

○○○○

堀哲郎(ほりてつろう)プロフィール
  • 1954年 山形県大江町生まれ
  • 1978年 東京芸術大学絵画科卒業
  • 1980年 東京芸術大学大学院版画科卒業
  • 卒業後、版画制作とミニチュアによる18世紀欧米の生活の中の物と技術をテーマに作品を制作
  • 1978年〜 東京、山形で版画による個展、グループ展多数
  • 1994年 究極のミニチュア展(浜岡市、大阪市)
  • 2002年 驚異の現代作家たち/北原照久アートコレクション展(横浜/そごう美術館)
  • 現在、西武コミュニティカレッジ・ミニアチュール工房講師
  • さいたま市在住
  • <作家ホームページ> http://t2rou.qee.jp/

▲ページのトップへ